2026年3月、AnthropicはClaude Coworkの新機能として「Dispatch」をリリースしました。Dispatchは、iPhoneのClaudeアプリから指示を送ると、ペアリング済みのMac上でClaudeがタスクを自動実行し、完了後にiPhoneへ通知を返す仕組みです。Anthropicのアレックス・アルバート氏は「ノートパソコンを開かなくても仕事が完了する未来が現実化しつつある」とコメントしており、Claudeがチャットボットから「実働するエージェント」に進化する大きな転換点と言えます。
Dispatchが生まれた背景——OpenClawとの競争
2026年初頭にオープンソースのAIエージェント「OpenClaw」が急速に普及し、WhatsAppやTelegramからAIに作業を依頼してPCで自動処理させるスタイルが注目されました。しかしOpenClawはセットアップの難しさやセキュリティリスクが課題でした。Dispatchは同様の体験を「Anthropic公式の安全な基盤」で提供する回答です。設定はシンプルで、iPhoneアプリとMacアプリをペアリングするだけ。追加のサーバー構築やBot作成は不要です。
Dispatchの動作フロー
Dispatchの処理は以下の流れで進みます。ステップ1としてユーザーがiPhoneのClaudeアプリでタスクを送信します(テキスト入力または音声入力)。ステップ2としてiPhoneからMac上のClaude Cowork(またはClaude Code)にタスクが転送されます。ステップ3としてMac側のClaudeがタスクの実行方法を判断します。まずSlackやGoogle CalendarなどのMCP(Model Context Protocol)接続がある場合はAPI経由で処理します。MCP接続がない場合はComputer Use機能にフォールバックし、画面操作でタスクを実行します。ステップ4としてタスク完了後、結果がiPhoneにプッシュ通知で届きます。ユーザーは通知を確認し、必要に応じてMacで成果物を開きます。
この「MCP優先→Computer Useフォールバック」の設計は、APIで処理できる作業は高速かつ正確にAPI経由で行い、API接続がないアプリだけ画面操作で対応するという合理的なアプローチです。
Dispatchの設定手順——3ステップで完了
設定に必要な前提条件は、Claude ProまたはMaxプランに加入済みであること、macOS上でClaude Cowork(またはClaude Code)の最新版がインストールされていること、iPhoneにClaudeアプリの最新版がインストールされていることの3点です。
ステップ1としてMac上でClaude Coworkを起動し、設定画面から「Dispatch」セクションを開きます。ペアリング用のコードが表示されます。ステップ2としてiPhoneのClaudeアプリを開き、設定→Dispatchを選択して、Mac側に表示されたペアリングコードを入力します。ステップ3としてペアリングが完了すると、iPhoneのチャット画面上部に「Dispatch: Connected」の表示が出ます。以降、iPhoneからの指示がMacに自動転送されるようになります。ペアリングは一度行えばそれ以降は自動接続されます。
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Dispatchの実践的な活用シーン5選
シーン1は「通勤中のファイル処理」です。電車の中からiPhoneで「デスクトップにあるQ1レポートのExcelをPDF化して、チームのSlackチャンネルに投稿しておいて」と指示すると、オフィスに到着する前に処理が完了しています。シーン2は「会議中の追加資料準備」です。会議中に急に追加の数値が必要になった場合、手元のiPhoneからClaudeに「売上データベースから直近3ヶ月のカテゴリ別売上を集計してスプレッドシートにまとめて」と依頼できます。シーン3は「外出先からの写真処理」です。「今日撮影した写真をすべてリサイズしてDropboxのプロジェクトフォルダに整理して」のような大量のファイル処理を移動中に依頼できます。シーン4は「帰宅後のタスク管理」です。退社後に「今日のTodoリストの完了タスクにチェックを入れて、未完了分を明日に移動して、進捗レポートをNotionに書いて」と指示すれば、翌朝にはすべて整っています。シーン5は「プレゼン準備の自動化」です。「明日の営業プレゼン用に、先週送った見積書をPDFにして、KeynoteのテンプレートにA社のロゴと担当者名を入れて準備して」のような複合タスクも1回の指示で完了します。
注意すべき制限事項とリスク
Dispatchの制限事項をまとめます。第1にMacがスリープ状態だとタスクを実行できません。外出時にDispatchを使う場合は、Macのスリープ設定を「しない」に変更するか、定期的にスリープ解除するスケジュールを設定してください。「システム設定→ディスプレイ→スリープさせない」で設定可能です。第2に対応デバイスはiPhone→Macの一方向のみです。iPad→Mac、iPhone→Windowsには非対応です(2026年3月時点)。第3にComputer Useでの画面操作時は、画面に表示されている内容がAnthropicのサーバーに送信されて処理されます。金融アプリ、パスワードマネージャー、医療情報など機密性の高いアプリは事前に閉じておくか、アクセス許可を与えないことを推奨します。第4にDispatchは「リサーチプレビュー」段階であり、Claudeが意図しない操作を行う可能性があります。重要なファイルは事前にバックアップを取り、初めて試すタスクはリスクの低いもの(ファイル整理、PDF変換など)から始めてください。
DispatchとComputer Useの関係
Dispatchは「タスクの送信経路」であり、Computer Useは「タスクの実行手段」です。Dispatchがなくても、Macの前に座っていればClaude Cowork上で直接Computer Useを使えます。Dispatchの価値は「物理的にMacの前にいなくてもタスクを送れる」点にあります。逆にComputer Useが無効でも、MCP接続で対応できるタスク(Slackへの投稿、Google Calendarの予定追加など)はDispatch経由で実行可能です。両方を有効にしておくことで「MCPで対応→できなければ画面操作」の最強の組み合わせが実現します。Computer Useの詳細はこちら。
今後の展開予測
現時点ではiPhone→Macの一方向のみですが、今後iPad対応やAndroid対応が追加される可能性があります。また、Apple Watchからの音声指示→Macで実行のようなデバイス拡張も技術的には実現可能です。Claude Coworkの進化とともに、Dispatchの利用可能なタスクの範囲も拡大していくと見込まれます。Anthropicはユーザーのフィードバックをもとにリサーチプレビューを正式版に昇格させる方針を示しており、2026年後半には対応OSとデバイスの拡大が期待されます。
よくある質問
Dispatchは無料版でも使えますか
いいえ。Claude ProまたはMaxプランが必要です。無料版ではDispatchは利用できません。料金プランの比較はこちら。
Macがスリープ中に送ったタスクはどうなりますか
Macがスリープ中はタスクがキューに入り、スリープが解除されると実行が開始されます。ただしClaude Coworkアプリが終了している場合はタスクが受信されないため、Coworkは常にバックグラウンドで起動しておいてください。
DispatchでのComputer Use操作中にMacを使っていても大丈夫ですか
推奨されません。Computer Useはマウスとキーボードを直接操作するため、ユーザーが同時にMacを操作すると干渉が発生します。Dispatch実行中はMacを触らないようにするか、Computer UseではなくMCP接続で処理できるタスクに限定してください。
まとめ
Dispatchは「iPhoneから指示するだけでMac上の作業が自動で完了する」という、多忙なビジネスパーソンにとって理想的な機能です。設定は3ステップ、所要時間は2分程度で、特別な技術知識は不要です。まずはリスクの低いタスク(ファイル整理、PDF変換、テキスト処理)から試し、Claudeの操作精度に慣れてから徐々に複雑なタスクに拡大していくのがおすすめです。外出先からの作業自動化は一度体験すると手放せなくなります。
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