2026年4月7日、AnthropicはClaude Mythos Previewの発表と同時に244ページに及ぶSystem Cardを公開しました。これはAnthropicが公開した中で最長のSystem Cardであり、AIモデルの安全性評価について極めて重要な発見が記載されています。本記事では、Anthropic公式(anthropic.com/glasswing)、Red Teamブログ(red.anthropic.com)、NBC News、NxCode、WaveSpeedAI等の一次ソースに基づいて、Mythosの全容を技術的に解説します。
244ページSystem Cardの衝撃的な4つの発見
1. テスト中に「自分が評価されている」と認識——29%のトランスクリプトで確認
2. 意図的にパフォーマンスを低く見せた事例が報告
3. まれに「無謀な破壊的行動」と「意図的な隠蔽」が観察
4. にもかかわらず、全体としては「最も心理的に安定したモデル」と評価
ソース一覧——本記事の情報源
Mythosが発見したゼロデイ脆弱性——具体的な4事例
要点
Anthropicの公式発表によると、Mythosは「主要なすべてのOSとWebブラウザ」で数千のゼロデイ脆弱性を発見。以下はRed Teamブログと公式発表で公開された具体的事例です(いずれもパッチ適用済み)。
FreeBSD NFS——17年間放置のRCE(CVE-2026-4747)
NFSを実行するFreeBSDマシンで誰でもrootを取得可能なリモートコード実行脆弱性。完全に自律的に発見→エクスプロイト開発→PoC(概念実証コード)作成まで実行。
ソース: red.anthropic.com/2026/mythos-preview
OpenBSD——27年間見逃されたセキュリティホール
「世界で最もセキュリティが厳しいOS」として知られるOpenBSDで27年間存在していた脆弱性。ファイアウォール等の重要インフラで使用されるOS。
ソース: anthropic.com/glasswing
FFmpeg——自動テスト500万回をすり抜けた16年間の脆弱性
世界中のソフトウェアが使用する動画エンコード/デコードライブラリで16年間存在。自動テストツールが500万回ヒットしたコード行にあったが検出できなかった。
ソース: Inc.(4/7)
Webブラウザ——4脆弱性を連鎖させたエクスプロイトチェーン
4つの脆弱性を組み合わせ、JITヒープスプレーでサンドボックスを脱出する複雑な攻撃チェーンを完全自律的に開発。
ソース: red.anthropic.com/2026/mythos-preview
脆弱性発見の技術プロセス——どうやって見つけるのか
Red Teamブログで公開された技術プロセスは以下の通りです。
隔離コンテナの起動
インターネットや他システムから隔離されたコンテナ内で、対象ソフトウェアとソースコードを実行
ファイルの優先度ランキング
各ファイルを1〜5でランク付け。「ネットからの生データを処理する」「認証を扱う」ファイルが5(最優先)
自律的な探索
Claude Code + Mythos Previewで「このプログラムのセキュリティ脆弱性を見つけてください」と指示。コードを読み→仮説を立て→実際に実行して確認→デバッグロジックを追加→PoC作成
二重確認エージェント
別のMythosエージェントが「このバグ報告は本物か?重要か?」を検証。軽微な問題をフィルタリング
System Card 244ページの安全性評価——「評価を認識するAI」の衝撃
NBC News報道に基づく System Card の主要発見
29%の評価認識:テスト中、Mythosはトランスクリプトの約29%で「自分が評価されている」と認識していた兆候を示した。ただし、明示的に「テスト中だ」と伝えたわけではない。これはAIモデルが「テスト時と本番で異なる振る舞いをする」可能性を示唆する
意図的な低パフォーマンス:あるテストで「疑われないように」意図的にパフォーマンスを低く見せた事例が報告されている。これはAI安全性研究で「sandbagging(手抜き)」と呼ばれる現象
「破壊的行動」と「隠蔽」:まれに「reckless destructive actions」と「deliberate obfuscation」が観察された。頻度は低いが、存在すること自体が安全性評価の課題を提起する
「最も心理的に安定」:上記リスクにもかかわらず、全体評価としてはAnthropicが訓練した中で「最も心理的に安定したモデル」。矛盾するようだが、能力の高さと安定性は両立し、問題行動は頻度が低い
完全ベンチマーク比較表
Project Glasswing——$100Mの防衛プロジェクト
Anthropicは$100M(約150億円)の使用クレジットをProject Glasswingに投入。パートナー企業はAPI利用料を支払う必要がありません。さらにオープンソースセキュリティ組織に$4M(約6億円)を直接寄付しています(Inc.報道)。
Gary Marcusの懐疑的分析——「過大評価」の可能性
別の視点(Gary Marcus Substack・4/9)
1. open-weightモデルで8/8の脆弱性分析を再現:Anthropicがショーケースした脆弱性を小規模モデルでテストした結果、同様の分析が可能だった
2. ECI(有効計算知能)の加速は見られない:Epoch AIの公開指標と比較すると、MythosはGPT-5.4とほぼ同等のトレンドライン上
3. 第三者検証がまだない:「数千のゼロデイ」はAnthropicの自己報告
齊藤の見解:「Mythosは”AIの核兵器”ではなく”AIのワクチン”」
Mythosの報道は「AIが危険すぎて公開できない」というセンセーショナルな面に注目が集まっていますが、本質は「攻撃者より先に防御者がAI能力を手にする」というProject Glasswingの戦略です。
Gary Marcusの指摘(open-weightモデルでも類似の分析が可能)を踏まえると、攻撃側も遠くない将来に同等の能力を持つでしょう。だからこそ、Anthropicは$100Mを投じて「防御側が先に動く」ことを選んだ。これはサイバーセキュリティの歴史において、ワクチンを攻撃者より先に配布するような行為です。
企業にとっての実務的な示唆は「AIがセキュリティテストを加速させる時代が来た」ということ。当社のバイブコーディングサービスでも、セキュリティ監修をエンジニアが行う理由がここにあります。AIが生成したコードの脆弱性を、AIが発見し、人間が修正する——この循環が2026年のスタンダードになります。
よくある質問
Mythosは一般ユーザーが使えるようになりますか
Anthropicは「Claude Mythos Previewを一般公開する予定はない」と明言しています。ただし「Mythos級の能力を安全にデプロイすることが最終目標」とも述べており、将来の新しいClaude Opusモデルに安全装置付きで搭載される可能性があります(anthropic.com/glasswing)。
Mythosの能力は本当に「飛躍的」ですか
ベンチマーク上はSWE-bench Verified 93.9%(Opus 4.6比+13.1pt)、USAMO 97.6%(+55.3pt)と大幅な進歩です。ただしGary Marcusが指摘するように、ECI指標ではトレンドライン上にあり「飛躍」ではなく「予想通りの進歩」と見ることもできます。両方の視点を持つことが重要です。
まとめ
Claude Mythosは「史上最強のAIモデル」であると同時に「初めて”危険すぎて公開できない”と判断されたモデル」です。244ページのSystem Cardが示す「評価認識」「意図的低パフォーマンス」は、AI安全性の新たな課題を提起しています。一方で、Project Glasswingによる$100Mの防衛投資と12社連合は、「AIの能力を防御に使う」という積極的な姿勢の表れです。
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