結論
AIモードを使うと、外部サイトへのクリックは減ります。米国の利用者1,100人を対象にした事前登録のランダム化実験(arXiv 2608.18352)では、AIモードを使わせると外部サイトへのクリックが18.8ポイント減り、AI Overviewsを消すと8.8ポイント増えました。ただし米国の7日間の実験で、日本で同じ幅になるとは限りません。クリック数だけで判断せず、Search Consoleの生成AIレポートの表示回数、言及率、指名検索、直接流入を組み合わせて成果を見てください。
GoogleのAIモード(AIと対話しながら調べる検索画面)やAI Overviews(検索結果の上に出るAIの要約)が広がり、「サイトへのクリックが減るのでは」という声が増えています。ただ、これまでの数字の多くは観察データで、順位や季節の影響と切り分けにくいという弱点がありました。
2026年8月に公開された論文は、この問いに実験で答えました。私たちが確認した範囲では、AIモードの影響をランダム化実験で測った初めての結果です。その中身と限界、成果の測り方の変え方を説明します。
初のランダム化実験で分かったこと
ランダム化実験とは、参加者をくじ引きのように無作為にグループ分けし、条件だけを変えて結果を比べる方法です。条件以外の違いが平均的にそろうため、差を「その条件の影響」と考えやすくなります。事前登録とは、何をどう分析するかを実験の前に公開しておくことで、結果を見てから都合のよい分析を選ぶことを防げます。
実験の設計
論文はWangらによるもので、2026年8月18日にarXiv(論文の公開サイト)へ投稿され、9月23日にSearch Engine Landも紹介しました。対象はChromeを使う米国の利用者1,100人で、実施は2026年3月です。
最初の3日間で普段の使い方を記録し、その後の7日間は「通常のGoogle」「AI Overviewsを消す」「AIモードを使わせる」の3グループに無作為に分けました。
外部サイトへのクリックは−18.8ポイント
AIモードを使わせたグループでは、外部サイトへのクリックが18.8ポイント減りました。逆に、AI Overviewsを消したグループでは8.8ポイント増えました。
| 条件 | クリックの行き先 | 変化 |
|---|---|---|
| AIモード | 外部サイト全体 | −18.8ポイント |
| AIモード | ニュースサイト | −12.5ポイント |
| AIモード | −21.2ポイント | |
| AIモード | Wikipedia | −9.9ポイント |
| AI Overviewsなし | 外部サイト全体 | +8.8ポイント |
「ポイント」は割合と割合の差を表す単位です。「18.8%減った」とは意味が違うので、社内で共有するときは注意してください。
満足度も上がらなかった
利用者が満足していれば、クリック減は「AIが答えを出したから」と説明できますが、結果は逆でした。AIモードのグループでは、満足度、役に立つと感じる度合い、自分で操作できている感覚などが、いずれも下がりました。感想も否定的なもの(34%)が肯定的なもの(29%)を上回っています。
行動にも表れ、1日あたりのGoogle検索のセッション(ひと続きの利用)は0.92回少なく、ほかの検索エンジンを使う割合は11.2ポイント増えました。
この実験から言えること、言えないこと
現時点で最も強い根拠のひとつですが、次の限界があります。
| 限界 | 内容 | 読み方への影響 |
|---|---|---|
| 標本の偏り | 若く、学歴が高く、政治的にリベラル寄りの人が多い | 平均的な利用者とは違う可能性がある |
| 期間 | 条件を変えたのは7日間だけ | 慣れた後の行動は分からない |
| 介入の効き目 | 実験中にGoogleがページの構造(HTML)を変え、仕組みが働いた割合は約51% | 効果は小さめに出ている可能性がある |
| 国と時期 | 米国のみ。実施は2026年3月 | 日本語の検索や、その後の更新は未検証 |
まとめると、「AIモードはクリックを減らす方向に働く」根拠としては強いものの、「日本の自社サイトでもクリックが18.8ポイント減る」と読むことはできません。
ほかのデータ:表示の広がりと報道機関の流入減
実験以外のデータも増えていますが、それぞれ測っているものが違います。
| 調査 | 測ったもの | 数字 |
|---|---|---|
| Comscore | 米国のデスクトップ検索でAI Overviewsが出る割合 | 39.4%(2026年6月) |
| Chartbeat | 報道機関へのGoogle検索からの流入(前年比) | −40.2%(Adweekの報道では−36%) |
| Seer | AI Overviewsに引用されたページと、されなかったページのCTR | 2.07%と0.94% |
Comscoreのパネル調査(Search Engine Landが2026年9月22日に報道)では、米国のデスクトップ検索でAI Overviewsが出る割合が、2025年7月の25.8%から2026年6月には39.4%に増えました。測ったのは表示の有無だけですが、表示が増えるほど、実験で見たクリックへの影響も広がると考えられます。
Chartbeatのデータ(2026年10月1日報道、2025年7月〜2026年7月、主に報道機関)では、Google検索からの流入が前年比で40.2%減りました。Adweekは同じChartbeatの数字を−36%と報じており、「約4割減」と幅を持って見るのが妥当です。ただしニュース媒体の数字で、公式サイトで比較検討するBtoBの購買行動とは性質が違います。自社にそのまま当てはめないでください。
Seerの計測(2026年4月公表)では、AI Overviewsに引用されたページのCTR(表示のうちクリックされた割合)は2.07%、引用されなかったページは0.94%でした。表示が増えても、引用元に入れば影響を和らげられる可能性があります。表示の変化はAI Overviewsが一部クエリで全文表示にで解説しています。
日本ではどうか:AIモードを検索に使う人は28.4%
日本語のAIモードでクリックがどれだけ減るかを測った調査は、2026年9月〜10月6日に公表されたものの中には見つかっていません。それでも、日本で無視できる話ではありません。
CyberAgentのGEO支援部門「GEOラボ」の調査(2026年9月4日公表、15〜69歳、n=9,278)では、生成AIを検索手段に使う人が52.3%と、初めて半数を超えました。サービス別では、ChatGPTの30.6%に対し、GoogleのAIモードが28.4%と僅差です。一方で検索エンジンを使う人も86.9%おり、AIが検索に置き換わったのではなく、両方を使い分けている段階です。
AIモードの基本はGoogle AI Modeとは?で解説しています。
9月のAIモード:Gemini 3.8 Flash導入と引用リンクの消失
AIモードを動かすモデルは、月1回ほどのペースで入れ替わっています。7月にGemini 3.5 Flash、8月に3.7 Flashが入り、2026年9月2日には有料プラン(Google AI Pro・Ultra)向けのAIモードにGemini 3.8 Flashが導入されました。
直後の9月3日、AIモードの回答からリンクや引用が表示されない不具合が見つかりました。Google検索のプロダクト担当副社長Robby Stein氏は「意図した動作ではない」と認め、9月4日の朝までに修正されています。
引用の出方は、サイト側が何も変えなくても、モデルの更新で一晩で変わりえます。AIでの表示を記録している場合は、この2つの日付を注記しておくと読み違えを防げます。なお、日本の無料版のAIモードがどのモデルで動いているかは確認できていません。
電話で相談できます
読みながら「うちの場合は?」と思ったら、そのまま電話で聞いてください
たとえば、こんなことを聞いていただけます。
- ChatGPTやGeminiで自社名を聞いても出てこない。何が原因?
- SEOは外注しているが、AI検索の対策は別に頼む必要がある?
- 社内でできることと、外に頼むべきことの線引きは?
受付:平日10:00〜18:00|担当者が直接お答えします
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成果の測り方をどう変えるか
AIモードの利用が広がるほど、検索からのクリックは減りやすくなります。クリック数だけを成果指標にしていると、AIの回答で自社が紹介されていても「成果が出ていない」と誤読しかねません。
AI経由と分かる訪問は約2.5%だけ
Profound(AI検索での見え方を計測するツールを提供)の米国パネル分析(2026年7月1日公表、200万件超のAIとの会話)では、AIに言及されたブランドへの訪問が、その後7日間で平常時の1.5〜2.5倍に増えました。ところが、そのうちAI経由と識別できる訪問は約2.5%にすぎません。購入や成約までは測っていませんが、AIの影響の多くは参照元に表れないことを示しています。
組み合わせて見る4つの指標
| 指標 | 分かること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 生成AIレポートの表示回数 | AI Overviews・AIモードなどで自社ページが表示された回数 | Search Console |
| 言及率 | AIに質問したとき、回答に自社名が出る割合 | 主要な質問を複数のAIで繰り返し確認 |
| 指名検索 | 社名・製品名で検索された量 | Search Consoleで社名を含む検索語の表示回数 |
| 直接流入 | URL入力やブックマークからの訪問 | GA4の集客レポート |
Search Consoleの生成AIレポートは、2026年8月31日に全世界のサイトへ展開されました。AI Overviews・AIモード・Discoverの生成AI機能での表示回数を、ページ・国・日付・端末別に見られますが、クリック数はまだありません。Googleは日本を名指ししていないので、自社の画面で表示されるかを確かめてください。見方はSearch Console生成AIレポートとはで解説しています。
あわせて「生成AI機能」の設定も確認します。「除外」にすると、AI Overviews・AIモードでの表示も引用リンクもなくなります(通常の検索の順位には使わないとGoogleは説明)。
4つの指標は同じ表に並べて傾向を見ます。KPIの全体像はGEO対策の効果測定|追うべき5つのKPIで整理しています。
9月下旬からの変化は、スパムアップデートと切り分ける
9月下旬以降にクリックが落ちていても、すぐに「AIに奪われた」と結論づけないでください。Googleは2026年9月24日に「September 2026 spam update」を始めました。全世界・全言語が対象で、対象の内容は明かされておらず、10月6日時点で完了の表示は出ていません。
切り分けの目安は次のとおりです。Search Consoleで日付ごとに見て、表示回数と掲載順位も下がっているなら、まずアップデートなど順位の変化を疑います。表示回数と順位が保たれたまま、クリックだけが下がっているなら、AI機能など画面の変化を疑います。
今週やること
1. Search Consoleの「生成AI機能」の設定が、すべてのプロパティで「含める」になっているか確認する
2. 生成AIレポートが自社の画面に出るかを確かめ、表示回数を月次で記録し始める
3. 計測の記録に「9月2日 Gemini 3.8 Flash導入」「9月3〜4日 引用リンク消失」「9月24日 スパムアップデート開始」を注記する
4. 社名を含む検索語の表示回数とGA4の直接流入を、AI関連の指標と同じ表に並べる
5. 主要な質問をAIモードやChatGPTで複数回試し、自社名が出るか(言及率)を記録する
よくある質問
AIモードを使うと、クリックは何%減るのですか
米国の実験では、外部サイトへのクリックが18.8ポイント減りました。これは割合の差で、「18.8%減」とは意味が違います。仕組みが働いたのは約51%で、効果は小さめに出ている可能性もあります。
日本でも同じくらい減りますか
分かっていません。日本語のAIモードのクリックを測った調査は、2026年9月以降の公表分には見つかっていません。ただ、日本でもAIモードを検索に使う人は28.4%(CyberAgent、n=9,278)に達しており、影響がある前提で計測を整えておくのが現実的です。
自社サイトをAI Overviewsから外せば、クリックは戻りますか
実験の「AI Overviewsを消す」は利用者の画面での操作で、サイト側の設定ではありません。Search Consoleで「除外」にしても、要約はほかのサイトをもとに表示されうるうえ、自社の引用リンクがなくなります。引用されたい企業にとって利点はほとんどありません。
9月下旬からアクセスが落ちたのは、AIモードのせいですか
それだけとは限りません。9月24日からスパムアップデートが進行中です。表示回数や掲載順位も落ちているなら、順位の変化を先に疑ってください。順位が保たれたままクリックだけが落ちている場合に、AI機能の影響を考えるのが順番です。
出典
- Wangほか「AI in Search Reduces Publisher Referrals Without Improving User Experience: Experimental Evidence」(2026年8月18日)
https://arxiv.org/abs/2608.18352 - Search Engine Land「上記実験の紹介記事」(2026年9月23日)
https://searchengineland.com/google-ai-mode-cuts-clicks-satisfaction-study-490494 - Search Engine Land「Comscore Q2 2026 AI Intelligence Reportの紹介記事」(2026年9月22日)
https://searchengineland.com/google-ai-overviews-share-us-comscore-490381 - Android Headlines「Chartbeat 2026 Publisher Playbookの紹介記事」(2026年10月1日)
https://www.androidheadlines.com/2026/10/google-search-publisher-traffic-declines-40-percent.html - Adweek「Chartbeatの報告の紹介記事」(日付は未確認)
https://www.adweek.com/adweek-wire/chartbeat-latest-reports-showcase-shift-toward-owned-audiences-as-google-referrals-drop-36-year-over-year/ - Seer「AI Overviewsの引用有無別CTR」(2026年4月)
- CyberAgent「生成AIのユーザー利用実態調査(2026年8月期)」(2026年9月4日)
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=33787 - Search Engine Roundtable「Gemini 3.8 Flash導入の記事」(2026年9月2日)
https://www.seroundtable.com/google-search-ai-mode-gemini-38-42009.html - Search Engine Roundtable「引用リンク消失の不具合の記事」(2026年9月3〜4日)
https://www.seroundtable.com/google-ai-mode-gemini-38-no-links-42011.html - Profound「AI Mention Effect」(2026年7月1日)
https://www.tryprofound.com/blog/the-ai-mention-effect - Google「Search Consoleヘルプ:生成AI機能」(2026年8月31日時点)
https://support.google.com/webmasters/answer/16908024?hl=en - Google Search Status Dashboard「September 2026 spam update」(2026年9月24日)
https://status.search.google.com/incidents/XhUDXP7A67iHCD2kmbVu
※本記事は2026年10月6日時点の公開情報にもとづいています。実験は米国のもので、日本語の検索で同じ結果になるかは検証されていません。スパムアップデートは完了しておらず、AIモードのモデルや表示も今後変わる可能性があります。
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