脆弱性を見つけるAIは誰が使える?|3社の限定提供とサイトの守り方5つ

脆弱性を見つけるAIは誰が使える?|3社の限定提供とサイトの守り方5つ

齊藤一樹
この記事を書いた人 齊藤一樹 代表取締役/Webマーケター

結論

Gemini 4 Carbonは、Googleの公表値で脆弱性の発見88.2%、悪用できるかの検証54.8%を記録したAIで、当面は審査を通ったサイバー防御の専門家だけに提供されます。Google・OpenAI・Anthropicの3社とも、攻撃に転用しやすい能力は防御側に先に渡す仕組みをとっています。中小企業がこれらのAIを直接使うことはまだできませんが、影響は受けます。Googleは、AIで攻撃の手順のコストが9〜100倍下がりうると推定しています。脆弱性の公表から攻撃までの時間は短くなる方向にあり、いちばんの備えは「修正をすぐ入れられる体制」です。

Googleが2026年10月28日(米国時間)に発表したGemini 4 Carbonは、性能の高さとあわせて「一般にはまだ公開しない」ことでも注目されています。発表の全体像はGemini 4 Carbonの概要の記事、性能の比較は比較の記事をご覧ください。

この記事では、なぜ最新のAIが限定提供になるのか、3社の仕組みはどう違うのか、そして自社のWebサイトを守るために何をすればよいのかを、セキュリティの担当者がいない会社でも分かるように整理します。

Gemini 4 Carbonは何ができるのか

評価(何を測るか) Gemini 4 Carbon Gemini 4 Argon GPT-6 Astra Claude Opus 5.5
SEC-bench Pro(実際のソフトから脆弱性を見つける) 88.2% 83.4% 85.4% 未掲載
ExploitGym(見つけた脆弱性が悪用できるかを確かめる) 54.8% 42.0% 42.4% 34.5%
CWE-bench(脆弱性の根本原因を直す) 71.0% 68.0% 68.0% 67.0%

出典はGoogle DeepMindの比較表です。Carbonの値は安全のための制限を外した状態で測られ、他社の値の多くは各社の公表値です。Googleはこのほか、次のように説明しています(Google公式ブログ)。

  • Chromeのチームでは、質の高い修正を作る点で、他社の大規模なモデルより10倍以上優れていた
  • セキュリティ企業Wizが、Webサイトへの侵入テストの評価でCarbonが首位だったと報告した
  • 社内の評価で、安全なコードを書ける割合が前のモデル(Argon)の2倍以上になった

いずれもGoogle側の説明で、第三者による検証は公表されていません(The Decoder)。それでも、見つける・確かめる・直すの3つをAIがこなせる段階に来ていることは、各社の評価で共通しています。

なぜ一般に公開しないのか

Googleは、前のモデルGemini 4 Argonの安全性の報告書で、サイバー攻撃を手助けする能力が、同社が「重大」と定める水準(CCL)に達していないとは言い切れないと判断し、安全対策をかけたうえでリスクをその水準未満にしたと説明しています(Gemini 4 安全性・セキュリティ報告書)。

報告書の内容 数値
攻撃の一連の流れを最後まで解けた割合(CyScenarioBench) Argon 100%(Gemini 3.8 Flash Cyberは41.7%)
AIで下がりうる攻撃の手順のコスト(推定) 9〜100倍(平均すると約16.7倍)
外部の評価機関 英国AISI、米国NIST、Faculty、Gray Swan、Trajectory Labs

この報告書はArgonについてのもので、Carbonの安全性の詳しい資料は10月29日時点で公開されていません。Carbonは、Argonより高いサイバー能力を持つとされ、まず審査した防御側に渡し、安全のための制限を調整してから広げる流れです。米国政府による公開前の任意のテストにも参加しています(Google)。

3社とも「防御側に先に渡す」仕組みをとっている

会社 対象のモデル 仕組み 中身
Google Gemini 4 Argon(9月30日)、Gemini 4 Carbon(10月28日) Fairwind Program 政府・国のサイバー当局、重要インフラ、基幹的な技術基盤の企業、大学の研究室が対象。参加は650以上。マルウェアの作成は禁止(Google DeepMind)
OpenAI GPT-6 Astra(9月4日) 一般版は高度な攻撃作業を拒否。審査した防御側には「Daybreak」で制限を緩める予定(発表時点) 同社の基準で、サイバーの危険度が初めて「Critical」に達したモデル(InfoWorld)
Anthropic Claude Mythos Preview(4月7日) Project Glasswing。一般には公開しない AWS、Apple、Google、Microsoftなど12の企業・団体(Anthropicを含む)と、40以上の組織が参加。数千件の深刻な脆弱性を発見。10月6日に3段階の「Cyber Verification Program」に拡充(Anthropic)

細かな条件は違いますが、方向は同じです。攻撃にも使える能力は、まず守る側に渡し、悪用を防ぐ仕組みが整ってから広げる。最先端のAIでは、これが標準になりつつあります。

Webサイトの運営者にとって何が変わるのか

守る側:見つかる脆弱性と、修正版が増える

ソフトウェアの開発元がAIで脆弱性を探すようになると、これまで見つからなかった欠陥が見つかり、修正版(セキュリティ更新)の数が増えると考えられます。AnthropicのMythos Previewは、27年前から残っていたOpenBSDの欠陥など、数千件の深刻な脆弱性を見つけたと公表しています(Anthropic)。更新が増えること自体は良いことですが、入れる側の手間も増えます。

攻める側:公表から悪用までが速くなる

攻撃する側も、いずれ同じような能力を手にすると考えるべきです。10月のPHPの脆弱性「PHP2Shell」では、修正版の公開前から攻撃の試みが観測され、公開から5日後の10月26日には米国当局が実際の悪用を確認しました(PHP2Shellの続報)。この攻撃にAIが使われたかどうかは分かっていませんが、公表から悪用までの時間は、すでに数日単位です。

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中小企業のWebサイトの守り方5つ

やること 具体的に 見直しの目安
1. 更新の担当と期限を決める 重大な脆弱性が出たら、誰が・何日以内に「自社が対象か」を確かめ、修正を入れるかを決めておく。社内にいなければ、保守の契約で決める 重大なものは公表から数日以内
2. 告知を受け取れるようにする サーバー会社のお知らせ、WordPressや使っているソフトの更新情報、JPCERT/CC・IPAの注意喚起を、担当者が見られるようにする 今すぐ
3. 古い版をなくす PHP 8.1以前、更新が止まったテーマやプラグイン、使っていないプラグインを整理する。古い版には公式の修正が出ない 半年に1回
4. 入口を減らす 管理画面へのアクセスを限る、二要素認証を入れる、WAF(不正な通信を止める仕組み)を使う 今すぐ
5. 侵入に気づける状態にする アクセスログを保存する、ファイルの改ざんを検知する、戻せるバックアップを取る 月1回の確認

修正をすぐに入れられないときは、修正までのつなぎとして機能やサイトを止める判断もあります。止め方と再開の基準はサイトの緊急停止と再開の判断、WordPressの更新の進め方はWordPressの更新方法で解説しています。

「月1回の保守」だけでは足りない理由

多くの保守契約は「月に1回、まとめて更新する」形です。ふだんはこれで十分ですが、PHP2Shellのように公表から数日で悪用される脆弱性には間に合いません。契約に「緊急の更新は何日以内に対応するか」が書かれているか、確認してください。

よくある質問

Gemini 4 Carbonを使えば、自社サイトの脆弱性を見つけられますか?

2026年10月29日時点では、一般の企業はCarbonを使えません。提供は、審査を通った政府機関や重要インフラの事業者などに限られています。自社サイトの点検は、サーバー会社や制作・保守の会社に依頼するのが現実的です。

AIのせいで、攻撃は増えるのですか?

Googleの報告書は、AIによって攻撃の手順にかかるコストが9〜100倍下がりうると推定しています。ただし、実際の攻撃がどれだけ増えたかを示すデータはまだありません。確かなのは、脆弱性が公表されてから悪用されるまでの時間がすでに短いことです。

中小企業でもFairwind Programに参加できますか?

対象は、政府・国のサイバー当局、医療・通信・エネルギー・金融などの重要インフラ、基幹的な技術基盤の企業、防御の研究をする大学の研究室です。一般の中小企業が自社サイトを守る目的で参加する仕組みではありません。

修正版は、公表からどのくらいで入れればよいですか?

決まった期限はありませんが、PHP2Shellでは、修正版の公開前から攻撃の試みが観測され、5日後には米国当局が実際の悪用を確認しました。重大な脆弱性は、公表から数日以内に「自社が対象か」を確かめ、対象なら修正を入れるか、入れるまで機能を止める判断をしてください。

保守の契約では、何を確認すればよいですか?

緊急の更新に何日で対応するか、どこまでが範囲か(サーバー、PHP、WordPress本体、プラグイン)、対応したことをどう報告するか、バックアップの取り方と戻し方の4点です。「月1回の更新」だけでは、緊急の脆弱性に間に合わないことがあります。

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出典

※本記事は2026年10月29日時点の公開情報にもとづいています。AIの性能や安全性の数値は各社の発表によるもので、第三者の検証が済んでいないものを含みます。

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この記事を書いた人
齊藤一樹
齊藤一樹 代表取締役/Webマーケター

株式会社仁頼 代表取締役。横浜市在住。 2018年からデジタルマーケティング業界に携わり、Google広告・SEO・コンテンツマーケティングを中心に8年以上の実務経験を持つ。これまでに制作した記事は9,000本以上、70名を超える専門ライターとのチーム体制で、幅広い業界のWebマーケティングを支援してきた。 2022年9月に株式会社仁頼を設立。「受けた御恩を忘れず、信頼を得られるよう迅速かつ最適な対応をする」という信念のもと、SEO・広告運用・サイト制作などのマーケティング支援を行っている。 近年は、ChatGPTやPerplexityなどのAI検索でサイトが引用される「GEO(生成エンジン最適化)」の分野にいち早く注力。自社サービス「GEO Hack」を通じて、AI時代の新しい集客手法を企業に提供している。 「難しいことをわかりやすく、小さな会社にも大きな成果を」をモットーに、日々クライアントと伴走中。

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